大空を自由に飛び回ること。それは昔からの人類の夢である。1903年、ライト兄弟によるこの最初の飛行で、飛行機は急速な進歩をはじめる。これにともなって、パイロット用衣類に対する需要が生まれてくるようになった。こうした時代の要請に応じて、ウィリス&ガイガーもパイロット用衣料の製造を開始し、数々の飛行服の名品を生み出した。
1931年、初めて軍の支給したウィリス&ガイガー製飛行服が、この米国陸軍航空隊A-2タイプ革製夏季オープン・コックピット用フライトジャケットである。その優れた機能とデザインから、それまで支給された飛行服のなかでも、飛行士からもっとも支持を受けた。
A-2ジャケットは、製造を開始した当時と同じ、暗褐色の馬革か山羊革でつくられており、背部は一続き、付けの袖である。袖口とウェストバンドは、茶のウールの一方向畦編みニット。
風による衿のはためきを防止する政府支給の真鍮製ボタンダウン・カラー用スナップなどは当時の雰囲気を伝えてくれる。
第二次世界大戦中、米国海軍の戦闘パイロットのなかでもトップエリートたちは、狭い航空母艦上で離着陸を行うという危険な任務についていた。
その彼らがフライトジャケットに求めたものは暖かさと動きやすさ。これを実現したのがG-1フライトジャケットだった。
使用している革は山羊革。これは非常にコストがかかるものの、微妙な形ができることと、耐摩耗性が高いという2つの優れた特質を備えていた。
特徴としては両脇の大型ポケット、発信書類用内ポケット、体にフィットする袖口とウェストバンド部の二方向畦編み、三重縫いの山羊革の下衿が付いたムートンの衿、そして防風タブ。
Bomberを略した“B”の文字が付いていることからもわかるように、このジャケットは極めて寒い高高度を飛行する爆撃手のためにデザインされた。
このため、戦闘機パイロット向けの動きやすさではなく、暖かさと頑丈さに重点を置いたつくりとなっている、毛足の長い羊毛張りの胴部、真鍮製バックルのタブが付いた牛革の手首、喉のところから風が入るのを防ぐ2本の牛革バックル、ウエスト調整金具、手袋や地図を入れられるポケットなど、寒さに対する万全の備えがなされている。
そして、ジャケットの内側には、輝かしい歴史を物語る、オリジナルの防衛戦契約ラベルが付いている。