遠くまで広がるサバンナ。ライオンが獲物を追って疾走し、シマウマは水を求めて水場に集まる。そして、シマウマの向こうには羽を休める鳥たち。アフリカは20世紀初頭のアメリカ人にとっては心のなかに眠っているフロンティア・スピリットを呼び覚ましてくれる場所であった。それと同時にアフリカは危険も多く、ブッシュ やジャングル、砂漠といった苛酷な自然環境の中で、ウィリス&ガイガーの衣類は比類なき強靭さを発揮した。
アフリカを舞台にした作品を生み出す一方、釣りに、狩猟に、探検にと行動的に生きたアーネスト・ヘミングウェイ。アフリカ探検に出かけるにあたり、彼の要望に合わせたデザインでつくり上げたのがこのジャケットであり、尊敬の意味を込め、現在も彼の名前を冠している。
素材は340コットン・ブッシュ・ポプリン。その緻密な織りは、当時一番恐れられていたマラリア蚊から皮膚を守ってくれる鎧のような役目も果たした。
デザイン的にはベルト嫌いなヘミングウェイの注文に沿ったウエスト部分のゴム・シャーリングが特徴的だ。
カラーは、タンとピューターの2色。タンはサバンナ地帯で、ピューターは雨の季節のサバンナや木々の緑のなかで、保護色となる。
ニューヨークに本部を置くExplorers Club<探検クラブ>のメンバー のために、ウィリス&ガイガーが考案したもので、写真の撮影旅行やハイキングに出かけるときなどに最適のデザインである。
デザインのポイントは、必要なものを収納できる大きなポケット。両脇から背中に回る大きなポケットは2つのボタンを付けたゆとりのある構造により、予備の救命具が入れられる。
背中には、重たいバックパックを背負ったときにも体を守ってくれるキルティング・パッド付き。風への対策としては、フロントの比翼部分にジッパーとボタンを付けるとともに、ボタンの位置を左右互い違いにした。
その名前通り、ロールアップしたときに落ちないよう止めておけるタブが、袖の内側に付いた長袖シャツ。
両胸のポケットはフラップ付きで蛇腹になっており、双眼鏡を入れることもできる大きさだ。
素材は340コットン・ブッシュ・ポプリン。縫製にも気を使っている。シンンプルなデザインのなかで機能を追求した、完成度の高いワーク・シャツに仕上がっている。
アメリカ合衆国第34代大統領(1953〜1961年)として活躍したアイゼンハワーは、2回の世界大戦を戦った歴戦の強者として知られている一方、自然を愛する大の釣り好きでもあった。
その彼が釣りに出かけるとき愛用していたのが、このジャケット。左胸のハサミ入れ、右脇センター寄りには釣り竿を挿すためポケットとループ、背中にはセーターなどが入る大きなポケット、といった具合に目的に合わせた大きさやデザインのポケットを数多く備えている。
機能的には、取り外しできるフードに、補強革が付いた衿。袖はロールアップ・スリーブとなっており、半袖にも変身する。